飼い犬と法律

雪が降る中、小さな子犬が無残に捨てられていた。
小さな体を震わせて寒そうに震えている。

「このままでは凍えてしまうかもしれない。」と思い、今日から我が家の一員になることにした。
捨て犬を飼う場合、私は「何かしないといけない」のだろうか?

 

犬の飼い主には「5つの法的義務」が発生する

最近はペット可マンションも増えています。
以前よりも気軽に犬を飼うことはできるようになりました。

しかし、犬を飼うことになった場合、法律に従い必要な手続きをしなくてはいけません。
これは狂犬病予防法で定められた義務です。(違反は30万円以下の罰則)

犬を買う時の法的義務は5つあります。(いずれも原則30日以内に申請)

  1. 飼い犬の登録
  2. 狂犬病の予防接種(年1回)
  3. 飼い犬に鑑札と注射済票を装着
  4. 引っ越し(転居)をした場合は、移転手続き
  5. 死亡した時は抹消届

参照:犬の鑑札、注射済票について|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/10.html

これら3つを行うにはそれぞれお金が必要です。

1頭当たりの料金
犬の登録料 3,000円 市区町村役場または保健所に登録

一生涯有効(死亡した場合、届出が必要)

予防接種料 3500円前後 料金は動物病院によって異なる
注射済票(証明書および首輪につける証) 500円前後 予防接種を登録した病院から受け取る
変更届 無料 転居の場合、鑑札を交換する必要があります。
紛失していると再発行となり1,600円が必要です。死亡の場合、鑑札は返却することになります。
順番としては、

  1. お近くの動物病院で予防接種をする
  2. その病院で発行された(狂犬病)注射済票を受け取る
  3. お住まいの地域で定められた場所で登録手続きをする(注射済票が必要)
  4. 発行された鑑札(名札)・注射済票を首輪などで身につけるさせる

といった流れです。

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鑑札は迷い犬になった場合に便利

鑑札(プレート)は飼い主の「住所・氏名・電話番号」を役場で登録するともらえます。
もし登録されていれば迷い犬になっても、保護されたデータ(登録番号)をもとに飼い主に連絡がいきます。

そのため、「常に身に着けている首輪につけている」ことが望ましいです。

 

登録されていない犬(登録番号なし)は保護されても返却できない?

万が一、登録番号がない状態で飼い犬が保護された場合、動物愛護センターで保護されます。

もし、あなたの飼い犬が見つかったとしても、予防接種と自治体への登録が終わるまで返してはくれません。

また、万が一発見されずに一定期間を過ぎると殺処分もあり得ます。
飼い犬の登録は必ず行いましょう。

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そもそもなぜ登録が義務化されているのか?(狂犬病予防法とは)

狂犬病予防接種は愛犬を守るだけじゃない

まずは飼い犬が登録制になった理由をお話しします。
なぜ、犬を買う時に登録しないといけないのかというと、狂犬病を予防するために法律(狂犬病予防法)を作ったからといえます。

狂犬病は感染した動物は人を含め、100%死亡する病気です。

狂犬病とは、元となるウイルスに感染することで、脳が支配され狂ったように噛むようになり、汚染させて数日から数週間で死亡します。
人への感染例も少なく、ウイルスの動きもわからないため治療法は見つかっていません。(参照:日本獣医学会

狂犬病のウイルスは、唾液(つば)に含まれるため、主な感染経路は『咬まれた傷』です。
たとえ、”噛まれなくても”つばが体内に入り込むと感染してしまうため、防ぐのは難しい感染症といえます。

ただし、人から人への感染は確認されていませんが、動物間の感染はあります。(咬まれる以外にも、)

そのため、日本国内の飼い犬を対象に
「狂犬病予防法に定めるワクチンの接種を年一回受けるように法律で義務付けをしています」

つまり、犬を飼うなら「狂犬病の予防接種」と「(飼い主の連絡先の)登録」を必ずしなくてはいけないということです。

 

狂犬病は犬だけの病気ではない 人・猫・家畜にも感染

狂犬病発生国
出典:世界各地の狂犬病媒介動物 厚生労働省HPよりhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/

狂犬病はあらゆる哺乳類が感染する可能性があります。
犬以外でも、猫・豚・牛・馬なども感染します。

日本国内では発症した例はここ数十年間では確認されていませんが、海外では発症例があります。
コウモリやキツネ、タヌキなど野生動物が「狂犬病のウイルスを持っている」ことが多いです。

 

狂犬病は海外で感染するリスクが非常に高い病気

海外での狂犬病の発生状況
出典:狂犬病の発生状況 厚生労働省HPよりhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/

国土が狭い日本ではコウモリが数が少なく、咬まれるケースは少ないですが、
海外では洞窟などの人の手が入っていない自然も多く、野生動物は非常に危ないのです。

また、海外では日本のようにペットが登録制ではない国はとても多いです。
首輪をつけずに町の中を歩く犬が病気を保有する例も多く、いつどこで事故にあうかわかりません。

 

日本国内で発生が確認されると浄化作業が

また、万が一狂犬病が発病すれば、周辺地域の浄化をする必要があります。

狂犬病の浄化作業は、鳥インフルエンザの養鶏場殺処分よりも大規模です。

犬だけでなくすべての哺乳類が感染する病気ですので、発病地域の小動物はすべて何らかの処分になる可能性があります。

その規模は、ネズミやノラ猫にも及ぶでしょう。

たとえ飼い犬や飼い猫であっても何らかの検査は必要になるかもしれません。
日本で確認された例はありませんが、今後海外から入ってくる可能性は低くはないのです。

 

飼い犬の登録は「法律の義務」

狂犬病の予防接種や自治体への登録をしない飼い主が多くなっているようです。
統計によると、未登録を含めると70%近くになっているそうです。

飼い犬には予防接種と登録は法律で定められている義務ですので、必ず守るようにしましょう。

また、法律違反がわかると30万円以下の罰金刑になりますのでご注意ください。

 

ワクチン接種を忘れていた(過失)場合は罰金の対象にならない

狂犬病の予防接種(ワクチン投与)は、毎年定期的に1回受ける必要があります。

年に一回ですので、ついうっかり忘れてしまう方も多いようです。
大抵は、かかりつけの病院(一回目に受けた施設)からハガキで通知されることが多いですが、忙しくて後回しにした結果忘れることもあるでしょう。

このような場合、法律で義務とはいえ罰金刑の対象とはなりません。
また、今まで登録制とは知らずに、届け出を出さずに捨て犬を飼っていたケースも多いようです。

その場合も、何度も繰り返すなど悪質でない限り罪になることはありません。

正直に事情を話し、安心して登録申請を行いましょう。