日本ユニセフ協会は、2016年4月14日世界所要国における「子供の幸福度格差」レポートを公表しました。
※ユニセフとは、世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関のこと。
このレポートでは、4つの分野で集計されています。
日本の順位 | ランキングの計算方法(ユニセフレポートより) | |
所得 (貧困格差) |
34位 (41ヵ国中) |
0~17歳までの子どもを持つ世帯の可処分所得(社会保障給付を加え、税金を差し引き、世帯人数・構成による違いを調整した後の所得)で計算 |
教育格差 | 27位 (39ヵ国中) |
15歳の段階で「平均的」な子どもから、どの程度取り残されてしまっているのか |
健康 | 未参加 (35ヵ国) |
「比較的頻繁に健康上の問題を訴える子ども」の多さ |
生活満足度 | 未参加 (35ヵ国) |
子どもたち自身が感じる生活満足 |
出典:ユニセフ・イノチェンティ研究所 出版物|日本ユニセフ協会より
http://www.unicef.or.jp/library/library_labo.html
日本は、「健康」と「生活満足度」の調査はされておらず、「所得格差」と「教育格差」しか評価の対象になっていません。
それでも、所得格差が41ヵ国中34位(ワースト7)、教育格差は39か国中27位(ワースト12)と最下位から数えた方が早いという結果になっています。
このユニセフ調査(所得と教育の格差)でわかったのは、参加国でもワースト5に入るほど格差が見られる傾向にあるということです。
「所得」と「教育」の格差ランキング 日本はワースト5位
ユニセフレポート13には、「全分野の格差の平均順位」があります。
しかし、日本は2つの調査ができていないため、全分野のランキングで明らかになっていません。
そのため、正式な集計は発表されていないのです。
そこで独自で日本が参加している「所得」と「教育」の分野で、平均を計算すると下記のように「日本は39ヵ国中35位」になりました。
下から数えた方が早いのです。
順位 | 平均順位 | 所得格差の順位 | 教育格差の順位 | |
1 | デンマーク | 6位 | 4位 | 8位 |
2 | チェコ | 9 | 5 | 13 |
3 | アイルランド | 9.5 | 10 | 9 |
4 | フィンランド | 9.5 | 3 | 16 |
5 | ノルウェー | 12 | 1 | 23 |
6 | スイス | 13 | 6 | 20 |
7 | アイスランド | 14 | 2 | 26 |
8 | ポーランド | 14.5 | 23 | 6 |
9 | スロベニア | 15 | 19 | 11 |
10 | 韓国 | 15 | 15 | 15 |
11 | エストニア | 15.5 | 28 | 3 |
12 | クロアチア | 15.5 | 26 | 5 |
13 | オーストリア | 16 | 11 | 21 |
14 | チリ | 16 | 31 | 1 |
15 | 英国 | 16 | 7 | 25 |
16 | リトアニア | 17 | 27 | 7 |
17 | ラトビア | 18 | 32 | 4 |
18 | オーストラリア | 19 | 14 | 24 |
19 | オランダ | 19 | 8 | 30 |
20 | カナダ | 19 | 24 | 14 |
21 | ハンガリー | 19 | 21 | 17 |
22 | ドイツ | 20 | 12 | 28 |
23 | 米国 | 20 | 30 | 10 |
24 | ルクセンブルク | 21 | 9 | 33 |
25 | ルーマニア | 21.5 | 41 | 2 |
26 | スウェーデン | 22.5 | 16 | 29 |
27 | スペイン | 24 | 36 | 12 |
28 | ニュージーランド | 24 | 17 | 31 |
29 | フランス | 24 | 13 | 35 |
30 | ポルトガル | 26 | 33 | 19 |
31 | ギリシャ | 28 | 38 | 18 |
32 | イタリア | 28.5 | 35 | 22 |
33 | ベルギー | 29 | 22 | 36 |
34 | スロバキア | 29.5 | 25 | 34 |
35 | 日本 | 30.5 | 34 | 27 |
36 | トルコ | 34 | 29 | 39 |
37 | ブルガリア | 36 | 40 | 32 |
38 | イスラエル | 37 | 37 | 37 |
39 | メキシコ | 38.5 | 39 | 38 |
これって本当?日本の格差がここまで大きいなんて「おかしい」
ユニセフの調査結果を見て、こんな疑問が出てきませんか?
「日本は豊かな国のはずなのに、そんなに格差があるの?」
このレポートの数字は、ユニセフ独自の計算方法ですので、少し結果が違います。
各国の平均を表しているものではありません。
一般的な全体的なランキングではなく、「平均よりも下の世帯・子供たち」の数を集計しているのです。
やや違った計算方法で算出されていますので、全体的に学習環境が低いというわけではありません。
ただし、この順位が低ければ低いほど、学習格差は広がっていると考えられます。
所得格差(相対的所得ギャップ)の計算方法
底辺の子どもたちの格差を測定するため、分布の中央値にあたる子どもの世帯所得と、下から 10%にあたる(90%の子どもたちよりも貧しい)子どもの世帯所得とを比較した。
「平均的な所得がある家庭」と「所得が低い家庭」を比較した数値です。
つまり、全体的な所得が低いのではなく、所得が平均以下の世帯が対象になっているのです。
しかし、ユニセフレポートには「所得ギャップが大きい国ほど貧困率が高くなる」という評価になっていますので、今後日本は貧困格差が強まる可能性もあるようです。
教育格差の計算方法
この指標は、15 歳の段階で、学習到達度の低い生徒が、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの分野において「平均的」な子どもからどの程度取り残されてしまっているのかを捉えるものである。
つまり、学習到達度の低い生徒がどれほどいるかです。
上位は子供にとって理想的な国?「デンマーク」「チェコ」「アイルランド」
「所得格差、教育格差が少ない」ということは、「頭がいいけれど、お金がなくて大学に行けない」「授業についていけない子供たちはほったらかし」などが比較的少ないといえます。
すべての子供たちが平等に教育を受けている可能性が高い国ということです。
上位の国では、平均的な学力も高くなる傾向にあるようです。
上位国と日本の違い
日本でも授業料や教科書の無償化が進んで慰安すので、大きな違いはあまりありません。
強いて言うなら「教育に力を入れている国」が多いということでしょう。
デンマーク
教育レベルが低いとされる生徒への教育指導を徹底して教育レベルの底上げを図り、高等学校をはじめ職業専門学校等への進学率を95%程度とすることを目指している。
国民学校(通常10年間):義務教育
【授業料】無料(公立学校のみ)引用:の学校情報 外務省ホームページより
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/05europe/infoC52900.html
チェコ
公立学校の授業料は無料。
教育省認可の教科書、教材は無償で貸与、基本的学用品も支給される。
生徒の個人学用品その他の教材、校舎外課程(水泳・スキーコース・林間学校)、校外活動(ある場合)及び給食にかかる費用は保護者が一部負担。引用:チェコの学校情報 外務省ホームページより
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/05europe/infoC52800.html
アイルランド
義務教育は6歳~15歳の9年間だが、ほとんどの子どもは6歳以前の幼児学級から就学している。学校予算の大部分は、国からの補助金で賄われている。
【授業料】公立は無料。教科書は有料。
【進学状況】アイルランドの中等教育を修了した学生の約46%は大学等の高等教育機関に進学。高等教育には総合大学、科学技術カレッジ、教員養成カレッジがあり、ほとんどが国の予算で賄われている。
引用:アイルランドの学校情報 外務省ホームページより
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/05europe/infoC50200.html
日本は給与格差が大きくなっている影響もある
2015年あたりから大手企業の「ベースアップ(賃金水準のアップ)」が報じられています。
日本政府が呼び掛けた結果といえますが、中小企業は追い付いていないのが現状です。
しかし、賃金が上がっているのは、まだまだごく一部といえます。
中小企業の賃金が上昇しない限り、給与格差・所得格差はなくなりません。
その格差が、子供の教育にも影響を及ぼすのは事実です。
「頭がいいけれど、お金がなくて大学に行けない」「授業についていけないけれど塾に通わせられない」など、日本での教育格差は大きくなりつつあるといえます。
今回のユニセフレポート13を受け、日本政府は今後どのような反応を示すのでしょうか。
まずはそこが焦点といえます。