今までは「あなたにお金は貸せません」だったのに
マイナス金利で騒がれ始めて「お金を借りてください!利息も安くします。」とお願いされる立場になった。
これはなぜだろう?
日銀(日本銀行)が始めた「マイナス金利政策」が毎日のように報道されています。
マイナス金利の影響で銀行の収益が少なくなるため、「銀行の利息がほぼ0%」になったり、「住宅ローンが安く借りられたり」しています。
お金に関することですので、私たちの生活にも影響してきます。
定期預金や定額預金も下げられ、銀行に預けても盗難防止ほどにしか意味がないのです。
また、保険料なども値上がりします。
関連記事:保険料が2016年春から大幅値上げ?今加入するべきなの?
2017年には消費税10%の増税もあるのに、
「貯金も意味がない」「保険料も値上がりしてしまう」では家計のやりくりは大変です。
なぜこのような政策をとっているのか疑問に思う方も多いかもしれません。
ここでは
- 日銀がなぜマイナス金利を導入したのか?
- どういう効果を期待しいるのか?
- あなたはどうするべきなのか?
という3つの点について解説いたします。
そもそも日本銀行は何をしている?
まず日本銀行(日銀)の金利についてお話します。
日本銀行とは、日本で唯一日本円(硬貨や紙幣)を印刷・製造ができる銀行です。
財務省(2001年までは大蔵省)と呼ばれる日本政府の公的機関が管理しています。
民間の銀行が日本銀行にお金を預けると、0.1%の金利(利息)がもらえます。
私たちが民間の銀行にお金を預けて、毎年利息をもらっているのと同じ仕組みです。
もしあなたが10万円を銀行に預けて0.1%の利息をもらえたとしても100円しかもらえません。
ですが、銀行は億・兆単位なので「膨大な金額の利息が、日本銀行からもらえる」ということになります。
例えば民間銀行が10兆円を日本銀行に預けると、10兆円×0.001=100億円という利息がもらえる計算です。
しかも、日本銀行がつぶれない限り、元本割れをするリスクもありません。
つまり、銀行は私たちが預金しているお金をまとめて日本銀行に預けることで、利益を確保しているのです。
※ちなみに日本銀行にお金を預けることができるのは、正規で銀行業を営んでいる民間の銀行だけです。
私たち一般人は日本銀行の口座を開設することができません。
マイナス金利で民間の銀行はどうなる?
まず民間の銀行が今まで日本銀行からもらっていた金利がもらえなくなります。
マイナス金利といっても、ある一定の金額を超えた部分にしかかかりません。
それ以下の金額には、0円金利(無利息)もしくは今まで通りの0.1%の利息を付けています。
ですが、民間銀行が日本銀行に預けている金額は、すでに超過しています。
そのため、今以上に預けると年間0.1%の手数料を取られるため損をしてしまいます。
つまり、元本割れのリスクが出てきたのです。
銀行は企業ですので利益を上げなければいけません。
「余ったお金をどこに持っていくと営業利益を確保できるのか?」が銀行にとって今後大きな問題になります。
マイナス金利の目的は?「銀行にお金を吐き出させる」
民間の銀行は、今まで日本銀行にお金を預けると年利0.1%をリスクなくもらえていました。
日本銀行が潰れるということは、日本が倒産(デフォルト)することがない限りほぼないからです。
つまり、利益や預金が増えても従業員の給料を上げたり、ローンの金利を下げたりはせずに、銀行がお金をため込むことで営業利益が増えていくのです。
これが、今まで「銀行が倒産しにくい理由」ともいわれていたのです。
しかし、マイナス金利政策が出てきたことで一変しました。
今までのように日本銀行に預けることで利益を確保することができません。
さらに預けていたお金を引き上げなければ、手数料として”元本割れ”が発生します。
このままでは、前年度よりも利益が確保できませんので、業績が悪化する可能性があります。
業績悪化になれば、株価は下落し今まで支援してくれた株主に見限られる(株を売られる)可能性もあります。
株価は企業の価値や信用を表す物差しですので、下がってしまうと厄介です。
そこで民間の銀行がまず始めたのが、預金者の利息を大幅に下げることです。
結果:銀行が利益を確保する動きが始まった
今のままだと、預金者への利息も支払えず潰れてしまう可能性もあります。
まずは、預金の金利を大幅に下げて払い出しを少なくすることを優先しました。
一般の預金者は、今までそんなに利息をもらえていませんでしたし、一度に多くのお金を他の銀行に移すことはあまりありません。
そのため、一番真っ先に対策がしやすく、損をしにくいのです。
銀行ローンの金利引き下げ 本音は?
その次に始めたのが、日本銀行に預ける予定だったお金を一般の企業や個人に借りてもらうことです。
多くの人に借りてもらうのは簡単だ「銀行ローンの金利を今までよりも安くして、さらに審査を多少甘くすればいい」と銀行は考えたのです。
それに銀行ローンなら、日本銀行に預けるよりも高い利息を付けることができます。
(今まで個人向けのローンは安くても年利3~5%の時代でしたので多少下げても、日銀の利息0.1%よりもいい利回りです)
ただし、100%回収(取り立て)ができたらの話です。
貸し倒れのリスクはあるものの、そういう人には金利を下げなければいいのです。
ということで、銀行はこんなことを考えました。
→一定期間を過ぎると金利は上げますけど、そのころには景気が回復しているはずですので問題はないでしょ?
ひとまずは今までよりも低い金利で多くの人に借りてもらえれば、業績は安定するはず。』
→今まで貸し渋ってましたけど、個人さん・中小企業さんにも審査も金利も甘くします。
希望する方は今のうちに借りてください。
こんな風に考えたようです。(あくまで個人的な見解です)
マイナス金利政策「一つ目の課題はクリアした」ってこと?
民間銀行がローンの金利を下げることで、一般市場にお金を流通させる準備は整いました。
つまり、日本銀行は民間銀行にお金を吐き出させるという目的は「成功しそう」です。
ただし、まだ成功するかはわかりません。
ここからが問題です。
それは本当に借りてくれるかがわからないからです。
今の冷め切った日本の景気でお金を借りる消費者や企業は多いのでしょうか?
銀行ローンというのは借金ですので、必要ない人に無理に借りてもらうことができません。
また、個人や中小企業であっても一定の審査はあります。
銀行ローンの審査は一番厳しいので、多少甘くしても希望者が全員お金を借りれるわけではありません。
「自社商品を売りつけて利益を上げよう」
甘い話には要注意?「金利を安くします」は限定的?
ニュースを見ていると、いかにも銀行ローンが「金利を安くしている」というような内容が多いです。
しかし、本当にお得なのででしょうか
これは期間限定の金利の場合があります。
※数か月間だけが金利が低くなり、期間が過ぎると高くなる(またはマイナス金利がなくなると値上げされる可能性もあります。
もしくは、人によっては「ローンの金利が安い」に該当しない可能性があります。
※一部の優良顧客(今までの取引で問題がない人)だけが対象というケースもあります。
一般の人は対象外になっていることが多い。
安くなったみたいなのでローンを申し込みに行ったら、「今までとそんなに変わらない」と思う方も中にはいらっしゃるかもしれません。
その場合は、「銀行は人を見てお金を貸すかどうかを判断している」という言葉のとおりだということです。
銀行の営業マンが投資や保険を勧めて来たら要注意
銀行という会社は預金をしたり、お金を借りるだけが業務ではありません。
その他にも投資(株や投資信託など)や保険の窓口もあります。
これらの業務では契約に成功すると、銀行が手数料という名目でいくらか収益を得ることができます。
また、投資も保険も期間が長い契約になりますので、銀行側に優良顧客を囲い込むことができるメリットがあります。
つまり、収益を上げるには好都合の商品です。
最近始まったNISA口座も人気が集まっていますので、誘いやすい状況にあります。
株で儲かっても税金が引かれないのでお得なように見える口座。
ただし、損をしたときに損益通算(マイナスになった金額を他の所得の税金と相殺すること)ができないというデメリットがある。
つまり、損を出したら意味がないというリスクがある。
- NISA(20歳以上)投資額を含め年間120万円を上限に非課税対象になる
(利益が120万円非課税ではなく投資額と利益の合計を合わせた金額が対象) - ジュニアNISAの場合は年間80万円が上限
「投資について知らない人」は銀行員の話に乗ってはいけない
もしあなたに銀行員あるいは知らない人が
「NISAは株の利益に税金がかかりません。お得な口座です。」と声をかけてきても慎重に考えてください。
確かに株を買って値上がりして、利益を上げていれば確かにお得な口座かもしれません。
しかし、損をしていれば特例の意味がないのです。
むしろ逆に損をしてしまうというデメリットがあります。
※通常の証券口座であれば損をしたら確定申告っで負債として3年間繰り越して税金の控除ができる。
ただし、NISA口座での負債は対象外になる。
初心者がビギナーズラックで最初は調子が良くても、NISAの適用期間5年間を通してプラスにするのは簡単ではありません。
また、今は株式市場が荒れています(全体的に値下がり中)ので、今手を出すと痛い目を見る可能性があります。
いつ相場や景気が回復するのか、見通しも立たないまま何も知らないのに投資に手を出す行為は危険なのです。
投資は罠?銀行は手数料が取れる上に損をしない商品
銀行が投資を進める理由として取引をするたびに販売手数料が取れます。
- 株を買う時に手数料がかかります。
- また、売るときも手数料を取ります。
※インターネット取引は機械処理のため手数料は安くなります。
ただしパソコン上のホームページやツールの操作方法を覚えたり、直接窓口で相談できないデメリットもあります。(電話で問い合わせると通常以上の手数料を取られる場合が多い)
投資信託は手数料が高くつく
投資信託という投資商品があります。
これは投資のプロが複数の株や社債などに分散して運用運用するプランにお金を出資するという投資商品です。
あなた自身が株を購入したり、値ごろ感を見て売りさばく必要はありません。
多くの人と資金を出し合って運用を「(自称)プロ」に任せるのです。
この商品には、銀行が受け取る手数料以外に、投資のプロに渡す手数料が存在します。
銀行や証券会社などの販売する会社が受け取る「販売手数料」のほかにも、プロに支払う「信託報酬」や投資信託内で行っている運用に必要な手数料などがあります。
販売手数料 | 銀行や証券会社が受け取る手数料 | 投資代金以外に支払いが必要 |
信託報酬 | 「プロに支払う報酬」運用管理費用とも呼ばれる | 支払いは不要 |
売買委託手数料 | 投資信託が売買するたびにかかる手数料 | 支払いは不要 |
信託財産留保額 | 投資信託を購入した時と解約した時にかかる手数料 | 支払いが必要 |
※信託報酬と売買委託手数料は、投資している金額から引かれるため負担は不要です。
参照:投資信託のコスト – 投資信託協会
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/costtax/cost/
投資信託は普通の株取引よりも手数料が多くなる特徴があります。
うまく価値が上がっても利益は少なくなってしまいます。
時価が買った時より高くなっても、売るときに手数料で損をすることも考えられます。
株運用の知識がなかったり、相場を気にしないでいいメリットばかり強調され、こういったマイナスのデメリットを紹介されないセールスマンもいますので初心者の方は特にご注意ください。
投資について銀行員だけに相談するのは間違い
あなた自身に投資の知識がない場合、頼りになるのは銀行マンや窓口だけかもしれません。
しかし、銀行もボランティアではありませんし、窓口の係員が全員投資のプロではありません。
もともと銀行側は「手数料だけ確保すればいい」という考えがあります。
あなたが損しても、銀行は損をしないということで、多少いい加減な部分もあることを肝に銘じましょう。
これは「投資は自己責任ですので、損をしても当行には関係ありません」という意味でもあります。
投資に関して勉強をするのであれば、書籍やニュースを頼りに自分なりに分析することをお勧めします。
分析するだけなら、手数料もかかりませんし損をすることもありません。
他人だけに頼るのではなく、自分自身でできるところから始めることが何よりも大切です。