2016年3月7日新しい情報を追加しました。
2016年4月1日から始まる政策に「電力小売販売自由化」があります。
今まで固定されていた電力会社を、今後は「あなた自身で選ぶことができる」制度です。
つまり「電気を買う会社を選べる」ということです。
北は北海道~南は九州・沖縄まで、さまざまな会社が電気の供給を始めることになります。
新電力プランへの予約申込件数が電力広域的運営推進機関により発表されています。
日本全体で5万件以上に上っているとのことです。(2016年1月末日の集計)
※最新の集計では、27万件の申し込みになっています。(2016年2月末日時点)
しかし、その実質は関東地域(東京電力)と関西地域(関西電力)が大半を占めています。
大まかな申込件数 | ||
地域 | 2016年1月末日時点 | 2016年2月末日 |
東京電力管内 | 3万件 | 18万件 |
関西 | 2万件 | 7万件 |
北海道 | 数百件程度 | 4千件 |
九州 | 3千5百件 | |
中部 | 少数 | 3千件 |
東北 | 少数 | 2千件 |
四国 | 少数 | 700件 |
北陸 | 少数 | 500件 |
中国 | 少数 | 100以下 |
沖縄 | 少数 | ごく少数 |
このデータが意味することはどういうことでしょうか?
関東・関西は「電気代が高い」が原因ではない
関東地域の電気料金は、やや高い傾向にあります。
東京電力の管轄には福島電力がありますので、原発処理の費用だけでなく賠償請求や慰謝料がかさんでいるためです。
賠償項目のご案内|東京電力より
http://www.tepco.co.jp/fukushima_hq/compensation/guidance/index-j.html
つまり他の地域よりも高い電気代を支払っているということがいえるでしょう。
しかし、関西地方はそうでもありません。
また、沖縄の電気代も高い部類に入りますので、これが原因とは考えにくいのです。
「原発離れ」「東電の不買い運動」もちょっと違う
「東京電力からの乗り換えが多い」と聞くと、疑いたくなるのが「東電離れでは?」ということです。
福島電力の事件以降、原子力発電所は危険という認知が進んでいます。
今まで東京電力からしぶしぶ電気を買ってきた人も多いかもしれません。
また、関西電力は高浜原発所を再稼働しました。
電力自由化が解禁されれば、原子力発電が嫌な人は電力会社を変える傾向が強いかもしれません
しかし、それだけではこの数字にならないのではないでしょうか?
もっと具体的な理由があるはずです。
一番大きな差は「認知度?」でもなかった
関東と関西は、東京と大阪の大都市です。
新しいサービスの認知スピードや浸透力が、他の地域に比べて早いといえます。
また、キャンペーンや該当広告(看板など)も盛んにおこなわれています。
テレビCMはまだ解禁されていませんので、こういった地域格差が強いのかもしれません。
しかしよくよく調べてみると、新電力会社の多さによる”囲い込み競争”だとわかりました。
新電力会社の数が「関東だけに集中しすぎ」が原因(3月追記)
資源エネルギー庁(経済産業省の管轄)が発表している統計データから見てみましょう。
上の円グラフでは、「新電力会社の届け出が出ている地域」がわかります。(本社の場所)
- 関東(東京も含め)に本社を置く会社が65%を占めている
- その次に多いのが、近畿(関西)の13%
ということです。
つまり、関東地域の申し込みが多いのは、本社が東京に多く、競争(客の取り合い)が激化しているからともいえます。
それともう一つ、関東地域以外で電力自由化の力が入らない理由があります。
それは、スマートメーターの導入スピードです。
地方ではスマートメーターの普及が遅れている
スマートメーターとは、電力会社が遠隔操作で「検針(電気の使用料金)」や「電気会社の切り替え」ができるメーターです。
※契約している会社以外にも、そこに住んでいるご家族が消費電力の記録としてみることもできますす。
新しい電力会社に変更する(乗り換え)には、スマートメーターに変えなくてはいけないのです。
関連記事:従来の測定器・検針器とスマートメーターの違いは?
しかし、スマートメーターの設置が完了する見込みが、関東以外では遅くなっています。
つまり、新しく契約しても「すぐに切り替えができない状態のご家庭が多い」ということです。
- 関東地方:2020年度末
- そのほかの地域:2023年度末
また、スマートメーターの設置台数にも問題があります。
地域別スマートメーターの設置台数
- 東京電力は全世帯2700万台に対して、375万台が完了(全体における設置完了の割合13%)
- 関西電力:1300万台に対して、508万台(39%)
- 九州電力:全世帯810万台に対し132万台(16%)
- 中部電力:全世帯950万台に対し63万台(6%)
このようにスマートメーターの台数に地域格差があり、これが電力自由化が遅れている要因ともいえるのです。
申込件数が多すぎる「弊害」
関東地方では、すでに3万件を超えた予約申し込みが既にありますが、電力会社を4月1日当日に変えることができるわけではありません。
まずは、電気メーターをスマートメーターに変更する工事が必要です。
スマートメーターとは、次世代の検針機のことです。
インターネット回線(専用線)でつないで遠隔操作で、「使用電力の測定(検針)」や「電力会社の切り替え」を行う機械です。
一軒ごとに手作業で交換するのため、申し込みが多い地域では先着順になり時間がかかるといえます。
(一回だけの工事のみ設置後は不要)
東京電力によるとスマートメーターは2020年までに全世帯に設置完了するとのことです。
スマートメーターは、平成26年度(2015年)から平成32年度までの7年間で、当社サービス区域全てのお客さまに設置する予定です。
引用:スマートメーターについて|東京電力
http://www.tepco.co.jp/smartmeter/index-j.html
また、関西電力は2022年までにスマートメーターを全世帯に設置。
今後は平成34年度までにご家庭等の低圧受電のお客さま全数となる約1,300万台を導入いたします。
引用:スマートメーターについて [関西電力] http://www.kepco.co.jp/corporate/smartmeter/
申し込みが遅れるとかなり遅くなるということでしょう。
関東と関西の電力会社乗り換えが多いのは、このことを知っている方が早めの予約に踏み切っていることも関係しているのかもしれません。
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