毎年11月30日は「年金の日」(1130=いいみらい)【厚生労働省より】
この記念日に合わせるかのように、「年金支給額のルール改定」が決まりました。
今回の改定により、将来年金で給付される金額が大きく変わります。
今までの年金給付額は、「物価の増減」で決まっていましたが、
これからは、「現役世代の給与所得」で決まるようになったのです。
年金支給額改定にまつわる4つの年金制度
- 「年金給付水準の抑制(年1%)」2018年4月施行
→少子高齢化の進行に合わせた「マクロ経済スライド」の強化 - 「賃金・物価スライド」の見直し2021年4月施行
→年金支給額の増減基準を物価から賃金にする - 500人以下の企業でも、労使が合意すると厚生年金の対象にできる
→現在の対象:従業員501人以上の企業で、週20時間以上働く人 - 産前産後休業保険料免除制度
→国民年金に加入している女性が出産する場合、前後の納付を免除
「年金給付水準の抑制(引き下げ)」はなぜ必要?
少子高齢化だし、年金を納める人(現役世代)が少なくなっているのに、年金を受け取る人が多くなっているからだよね。
それもあるけど、「現役世代の給料(賃金)の上昇」や「物価の上昇」も影響が大きいのよ
え?給料って上がってるの?
お母さんは、いつも給料が少ないって言ってるよ
日本の賃金は毎年上昇している
毎年行われている「最低賃金の見直し」がいい例ですね。
地域別最低賃金額改定の各都道府県の引上げ(増加)額(6年間の目安) | ||||
Aランク | Bランク | Cランク | Dランク | |
2016年 | 25円 | 24円 | 22円 | 21円 |
2015年 | 19円 | 18円 | 16円 | 16円 |
2014年 | 19円 | 15円 | 14円 | 13円 |
2013年 | 19円 | 12円 | 10円 | 10円 |
2012年 | 5円 | 4円 | 4円 | 4円 |
2011年 | 4円 | 1円 | 1円 | 1円 |
ここ数年間は、「20~25円」と最低賃金の上昇額が大きくなっているのがわかりますね。
それに一部の大手企業では、「ベア」といって基本給ベースアップも行われています。
2016年春は政府側が「2%のベースアップを要求」して、トヨタ自動車などの製造関係が賃上げしました。
また、2017年春も「ベアを2%程度要求する予定」という報道もあります。
スライド調整率がなければ、「賃金上昇↑=年金支給額も↑」
日本全体でみると「賃金が上がっている傾向にある」ってこと?
そうなの。
もし、「マクロ経済スライド」がなければ、年金の支給額がどんどん増えてしまう。
つまり「給付と負担のバランスが崩れてしまう」のよ。
じゃあ、将来「私たちが年金をもらうときに困る可能性がある」ってことだよね?
それを無くすために今回の改正では、
物価が上がっても賃金が下がっていれば、年金の支給額を下げる方針になったのよ。
デメリットとしては、「食料品などが高くなっても、年金が上がらないので高くて買えない」ということになりかねないってことよ
マクロ経済スライドの効果とは?
今、少子高齢化や賃金上昇により、年金の支給水準額は増加傾向にあります。
このままでは年金の支払い額が増えていく一方になってしまい、
将来「今の現役世代が年金を受け取る時に、支払った金額より下がってしまう」可能性が出てきています。
その対策として、「マクロ経済スライド」を導入して抑制させるという政策になりました。
マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
これってどういう意味?
マクロ経済スライドは、年金の支給額の値上がりを調整する役目があります。
目的は「長期的な年金財政運営を実現させること」と発表しています。
目的:給付積立金として「1年分の年金」を確保
マクロ経済スライドでは、年金の給付と負担の均衡を保てるように「年金額の上昇を調整する期間を設定する」とあります。(100年間の財政均衡期間が終了するまで)
スライド調整率を設けて、1年分の年金を確保するのが目的です。
スライド調整率の計算式
「スライド調整率=公的年金全体の被保険者の減少率+平均余命の伸びを勘案した一定率」
スライド調整率には下限がある(年金が大きく減ることはない?)
このスライド調整率を強化することで、年金額の改定率が今までよりも抑えるようになります。
(上昇率が少なくなる)
しかし調整率には下限が設定されている為、年金が大幅に減るということはありません。
賃金や物価が大きく上昇した年の調整率 | スライド調整率を適用して、年金給付額の上昇を抑える |
賃金や物価の上昇が小さい | スライド調整率を小さくする。 または、適用しない(年金額の改定がない) |
賃金や物価が下落 | 年金額を下落率分だけ引き下げ (年金が減少する時はスライド調整はしない) |
スライド調整率は、賃金や物価が上昇した時のみ調整する仕組みです。
つまり、景気が今まで以上に悪くなっても、「スライド調整で年金受給額が大きく減る」こともないけど・・・、
逆に「減少額が小さくなる」こともないんだね。
500人以下の企業でも、厚生年金の加入が可能に?
平成28年10月に「社会保険の適用拡大」がされ、従業員501人以上の企業で、週20時間以上働く人が対象になりました。
これでは「従業員500人以下の企業」が、厚生年金に入ることもできず労働条件に不安があったのです。
しかし今回の改正に伴い、「500人以下の企業でも、厚生年金の加入が任意で出来る」ようになったのです。
ふ~ん。
で、厚生年金に入るとメリットは何があるの?
厚生年金に加入すると受けられる3つのメリット
- 自己負担が減る(会社と折半)
- 将来もらえる年金(終身)が増える
- 障害年金が増える
自己負担が減る(会社と折半)のは、多くの方がご存知かもしれませんね。
厚生年金になると、会社が半分払ってくれんでしょ?
厚生年金の人は支払いが「国民年金の人の半分でいい」から、かなりお得だよね。
だから、会社は負担が多くなるから嫌がると思うの・・・
強制じゃないし「ほとんどの中小企業は加入しない」ってことにならないの?
助成金(1事業所当たり最大600万円)を出すから、0件ということにはならないんじゃないのかな?
「将来もらえる年金(終身)」ってどのくらい増える?
厚生労働省ホームページには、モデルケースとしてこのように書かれていました。
毎月8,000 円(年額96,000 円)の保険料を納めた場合
- 40年間加入した人毎月19,000 円 (年額228,000 円)増額×終身
- 1年間だけ加入した場合でも毎月500 円(年額6,000 円)×終身
国民年金は、終身(死亡するまで一生涯)なので、長生きするほど大きなメリットがあります。
厚生年金の人は3等級でも障害年金の対象になる
まず違うのが、障害年金がもらえる認定度合いである「障害等級が違う」という点です。
- 障害基礎年金は、障害等級1級または2級の場合に支給
- 障害厚生年金は、障害等級3級の場合も支給
もし、医師が障害等級を3級と診断されると、国民年金だけの人は障害年金がもらえません。
結構差が大きいんだね
産前産後休業保険料免除制度って?
出産は、女性の体に大きな負担がかかります。
お腹が大きくなると働けないから、収入が少なくなるよね
そのため、健康保険や厚生年金の保険料が免除されます。
産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも徴収しません。
産前産後休業保険料免除制度|日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/menjo/20140327-04.html
ただし、免除制度には条件がありますのでご注意ください。
- 申出:産前産後休業をしている間に行うこと
- 免除期間:産前産後休業開始月から休業の終了予定日の前月まで
- 対象者:有給・無給であるかは関係なし。(すべての女性)
まとめ:将来の年金破たんを回避するために、「年金カット」は仕方がない?
今回の改正は、「年金カット法案」という報道で騒がれています。
しかし、年金の支給額を減らすというよりは、現役世代の賃金(負担額)に見合った金額に調整する法案だというのがわかります。
今までの指標が「物価」だったのを、「賃金」にしたのですから
今のままでは、将来賃金が下がったときに国民年金が破たんする(払えなくなる)可能性が高いので「負担を少しづつ軽くするべき」という考えがあるのがわかります。
「賃金が下がると、税収が少なくなる」(滞納者が増えたり、税収が少なくなるので)
しかし、今「年金を受給している人」にとっては、実質的に減らされることになりますので、事実上いい思いはしないのかもしれません。
国民年金が苦しいのは、受給資格が原則25年間から10年に短縮されたのも原因?
国民年金の受給資格が10年に短縮され、受給資格者が増えることも問題になっているのは確かです。
短縮されたことにより、64万人の無年金者(国民年金の支払いが25年以下で受給資格がない方)が、受給できるようになります。
そんなに未納?
桁あってるよね??
つまり、その分年金の支出が多くなるということです。
そりゃ~足りなくなるわ
注意事項
国民年金の支払いは国民の義務です。
10年しか払わなければいいということではありませんのでご注意ください。
年金の支払年数が少ないと、受け取る年金もかなり減ってしまいますからね。