今後「残業手当がもらえなくなる」かもしれない。
長時間労働の元となる「残業」に対して、労働基準法により上限を設定する可能性があるからです。
安倍総理は3月25日、日本人の長時間労働の現状に対し、
「日本人の残業時間を減らすために”規制”を設ける」と発表したのです。
今後、月80時間以上の残業をさせている企業に対し、労働監督署が立ち入り調査し現状を確認するとしています。
月80時間以上の残業が禁止される3つの理由
- 過労疾患の防止
- 雇用を増やす(1億総活躍プラン)
- 国際的な基準に合わせたい
特に今必死に取り組んでいる「1億総活躍プラン」が大きく関係している可能性があります。
ここでは、具体的な理由がどういう内容かを見ていきましょう。
過労疾患が年々増加
近年労災保険の過労疾患の認定数が増えています。
厚生労働省の資料によると、過労死自体は少なくなっていますが、
うつ病など精神疾患の労災認定が大幅に増えているのがわかります。
これを減らすには、労働時間を短縮させなければいけないと考えたのです。
雇用を増やす(1億総活躍プランの達成ために)
また、一人当たりの労働時間を減らすには、「新しく人を雇い入れればいい」という考えが政府側にあるようです。
長時間労働になるのであれば、「超過している時間(残業時間)を他の人に当てればいい」という考えです。
そうすれば、今働きにくいといわれている女性も働きやすくなるでしょ?
しかし、そう簡単にいくのでしょうか?
新しく人を雇うには、それなりのリスクがある
正社員や長時間のパートを増やすのであれば、給料だけでなく社会保険の加入など会社側に大きな負担があります。
また、他の人に任せられる仕事ではない場合もあるでしょう。
(技術や知識が必要な仕事をアルバイトにさせるわけにいきません)
最低賃金の引き上げやベースアップ(給料アップ)が叫ばれる現在では、今以上に人を増やす多少難しい考えといえます。
残業禁止令で、サービス残業が増える可能性も
その分しわ寄せが来るのが、私たち雇用される側といえます。
今まで残業時間にやっていた仕事を、勤務外にやらなくてはいけなくなる可能性があるからです。
今までであれば、渋々ながらも残業手当が支給されていますので私たちも納得して働けていました。
しかし、労働法で残業が規制されると、残業手当が出ない可能性があります。
残業手当を出してしまうと、税務署経由で残業させていたのがバレてしまうからです。
つまり、残業に対して給料を支払わない会社が出てくる可能性もあるのです。
そうなってくると、今まで優良だった小さな会社がブラック企業に変わるかもしれません。
「日本人の労働時間」国際統計からみた海外との違い
日本は他の国と比べると、長時間労働(残業)が多い国です。
労働政策研究・研修機構の資料によると、
日本人の労働時間は欧米諸国よりも200時間~400時間ほど長くなっています。
さらに、長時間労働者の数も多い国です。
日本男性の長時間労働者は約30%。それに対し他の国は10~15%で推移しています。
国際的にも「日本は労働時間が長い国」というレッテルが張られているのはご存知でしょう。
これを挽回したいという考えもあるようです。
この残業時間を「いかに国際基準に持っていけるのか」がカギといえます。
現在の労働基準法との違い 36協定とは?
現在の労働基準法では、労働時間を1日8時間以内、週40時間までと定めています。
(原則として週1日以上の休日を設けることとしています。)
それ以降は労働基準法第36条に基づき、届け出をした会社は「労働時間の延長(残業)」と休日出勤を認めています。
※これを三六協定(サブロク)といいます。
現在の届け出をすることで延長できる時間は以下の通りです。
しかし、原則的に決算時など繁忙期などの条件がなければ、このような残業をさせてはいけないのです。
それなのに、残業をさせている会社が多く(60%以上の会社が残業をさせている実態がある)、今回大幅な規制に踏み切ったといえます。