日本各地で高速バスや観光バスに人気が出始めています。
ここ数年間で観光バスの運行数は軒並み上昇し、町おこしにも一役買っているほどです。
しかし、先日のツアーバスの転落事故により、ずさんな経営が明るみになってきました。
格安と呼ばれるツアーバスも数多くあるのも事実です。
これらは相場よりも低い金で運行されることも多く、今回事故を起こした会社では国が定めた最低価格を下回っていたこともわかっています。
このような経営をしている会社は氷山の一角である可能性が高そうです。
とあるニュース記事によると、
「国土交通省が実施したバスの緊急監査では”6台中5台で安全対策に不備があった”」と報道しています。
つまり、ほとんどのバスが安全なツアーが出来ない可能性があるのです。
しかし、その監査内容が明記されていませんでしたのでここで少し解説いたします。
また、私たちがバスを利用する際に、注意して確認する項目もいくつかあります。
そちらもご確認いただき、安全な旅行にお役立てできましたら幸いです。
この記事は国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/)を参照して作成しています。
乗合バス・貸切バスの監査とは?
行政では高速を走る観光(ツアー)バスを「高速乗合バス(一般乗合旅客自動車)」といいます。
長さが概ね50km以上の路線において、停車する停留所を限定して運行する自動車のこと。
※貸切バス「一般貸切旅客自動車」とは区別されていますが、監査内容は同じです。
そもそもバスの監査とはどういう内容なの?
まずは監査の方法が3つあります。
- 臨店(営業所)による監査
- 呼出による監査(事業者の代表者が運輸支局に出向く)
- 街頭監査(発着場など街頭において実施)
今回報道があった緊急監査(抜き打ち)は、簡易的な「街頭監査」と思われます。
「バスの監査」で重要視されている内容
国土交通省のホームページによると、重要視されている監査内容は9つあります。
- 事業計画の遵守状況
- 運賃・料金の収受状況
- 損害賠償責任保険(共済)の加入状況
- 自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無
- 社会保険等の加入状況
- 賃金の支払い状況
- 運送引受書(写しを含む。)の作成・交付・保存状況(一般貸切旅客自動車運送事業に限る。)
- 運行管理の実施状況
- 整備管理の実施状況
引用:国土交通省自動車交通局 行政処分の基準|自動車総合安全情報より
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/baseline.html
乗合バスの監査では、これらを毎回すべての項目を行う必要がなく、監査を行う場所によって内容が変わります。
営業所で監査をする場合、書類の確認だけでなくバスの確認(整備や違法車などの確認)が出来ますが、「呼出による監査」では書類の確認しか出来ないという具合になるからです。
また、今回のように街頭で行う監査では「”安全対策に不備があった”と報道」がありましたので「①事業計画の遵守状況」や「⑧運行管理の実施状況」、「⑨整備管理の実施状況」を調査したと思われます。
※街頭監査は発着場で行うため、監査できる内容が少ない。
あなた自身が「利用する前」「乗車前」に確認できること
国土交通省により「高速乗合バス表示ガイドライン」が定められています。
その中には、「ホームページ内」「バス内」などでさまざまな表示をする義務が書かれています。
その中で、あなた自身が知っておくべきことをまとめてみました。
ホームページやチラシに表示が義務になっている7つの項目
- 運行形態
- 運行会社
- 実車距離
- 所要時間(見込み)
- 運転者 「2名乗務」、「1名乗務」、「途中交替」
- 任意保険・共済
- バス停留所
これらはツアーバスや観光バス、旅行代理店の広告(チラシやホームページ)で記載する義務があります。
特に注目したいのが、「運転者の人数」と「保険」
高速夜間バスを利用した事がある方はご存知かもしれませんが、2人の運転手さんが乗務しパーキングエリアについたら運転を交代しています。
これは「交替運転者の配置基準」という旅客自動車運送事業運輸規則に、一人当たりの運転距離や運転時間、休憩時間が定められているからです。
長距離バスの場合原則的に、「昼間500km以上」「夜間400km以上」の運行は、ワンマン(1人乗務)が禁止されています。(20分以上の休憩を挟むと100kmを超えてもよい)
深夜帯なのに、数箇所のパーキングエリアで休憩があるのは乗務員が交替するためといえます。
また、任意保険に関しては未加入で運行する会社もあるようです。
ただし、任意保険がなくても共済保険がある場合、補償は受けられますのでご安心ください。
もし、違反している会社があれば国土交通省に相談
もし、これらの項目に違反していると感じれば”危ないバス会社”かもしれません。
疑問に思ったら、国土交通省に相談することもできます。
電子メールやFAXで連絡できます。
※バスの「ナンバープレート」を控えておくと便利です。(記入する項目あり)
相談先:高速ツアーバス安全通報窓口 – 国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000006.html
任意で表示をする項目
- 運行会社に関する情報
- 貸切委託運行における委託者及び受託者に関する情報
- 安全性向上のための自主的な取り組み
こちらは任意で表示される事がある項目です。(義務なし)
※チラシや新聞の広告など、書き込めない場合は面積が小さいため省略したり、ホームページで紹介しているときがあります。
ただ、これらが直接事故防止につながるかといえば、あまり効果は期待できません。
表面的に書いてあっても、守られていなければ意味がないからです。
「車両における表示」にも意味があります
バス車内表示・車内アナウンスも義務
片道が400km以上の運行をするバスでは、「車内表示」と「運行案内のアナウンス」が義務になっています。
※実車距離が400kmを超えない場合不要
表示は入り口や運転座席の後部にあり、車内アナウンスは出発時と交替時に行われます。
6つの車内表示(400km以上の運行で義務)
- 乗合バス事業者名
- 運行経路(バス停留所・休憩場所時間・発着予定時刻)
- 実車距離
- 運転者の配置計画(休憩や交替など)
- 車両の初度登録年月
- 運行に係る注意書き
http://www.mlit.go.jp/common/001034996.pdf
まとめ:安全な運行が出来るかどうかは運転士による
いろいろ書きましたが、義務化されている表示やアナウンスは形式的なものに過ぎません。
しっかりと表示されていても、バスの運転士が過労で居眠り運転をしてしまう恐れもあります。
しっかりしたバス会社を選ぶ必要がありそうです。