うなぎの蒲焼とワシントン条約

2016年9月以降、うなぎの値段は急激に高くなるかもしれません。
いや、もしかしたら「土用の丑の日にウナギが食べられなくなる」かもしれないのです。

国際会議であるワシントン条約の第17回が行われ、
『ウナギの絶滅』が議題になり、輸入が困難になる可能性が強いためです。

ワシントン条約とは?

180か国が参加している「動物保護」に関する世界的な話し合い。
3年ごとに開かれ、2016年9月は南アフリカで開催。

主な目的は、絶滅のおそれのある動植物の国際取引(貿易)を規制すること。

日本は世界でトップクラスのウナギ消費大国で、世界の漁獲量の7割を消費しています。
ワシントン条約で規制されると、土用のウナギが食べられなくなる可能性があるのです。

なぜ絶滅の恐れがない「うなぎ」の輸出入が規制されるのでしょうか?

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うなぎは稚魚を獲って育てるしかできない

うなぎ

うなぎの生態は謎が多く、養殖ものといっても天然の稚魚(シラスウナギ)を育てる方法しかありません。

「産卵→幼魚→稚魚→成魚→産卵」というサイクルが出来ないのです。
その為、どの国も海で稚魚を取ってきて、エサを与えて育ています。

 

稚魚の乱獲で成魚が激減

ニホンウナギの国内採捕量
出典:水産庁 ウナギをめぐる状況と対策についてより http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/meguru11.pdf

私たちは稚魚を獲って食べているという事は、大人に成長したウナギ(成魚)の数は限られているという事です。

すべての魚を取っている事はありませんが、ここ数年は高く売れるため乱獲が目立ち卵を産んでいるうなぎの数は大幅に減少しています。

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ニホンウナギがワシントン条約「附属書Ⅱ」に該当する

世界地図

ワシントン条約には、附属書と呼ばれる3つの区分があります。

付属書の種類 絶滅の危険性 輸出入の規制
付属書Ⅰ 絶滅のおそれのある種
  • 学術研究を目的とした国際取引は可能
  • それ以外の取引は、輸出国と輸入国で許可証が必要(商業目的はほぼ不可)
取引を規制しなければ、今後絶滅のおそれのある種 商業目的の取引は可能

ただし、輸出国の許可書が必要

自国内の保護のため、他国の協力を必要とする種 商業目的の取引は可能

輸出国が発行する「輸出許可書」か「原産地証明書」が必要

参照:ワシントン条約について -貿易管理(METI/経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/cites/cites_about.htm

 

付属書Ⅱには、“現在絶滅の恐れがなくても、取引を規制しなければ絶滅する”という危険性の動植物が含まれています。

現在ヨーロッパウナギは、この規定に触れるため日本へ輸入はできないのです。

また、ニホンウナギも現象にあり、将来はワシントン条約で規制される可能性が高いのです。

 

2016年土用のウナギはどうなる?

ニホンウナギの取引価格の推移グラフ
出典:水産庁 ウナギをめぐる状況と対策についてより http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/meguru11.pdf

2015年までは、普通に中国産のウナギが売られていました。

しかし、2013年以前に輸入したヨーロッパウナギの稚魚が成長したものであり、2015年2月には中国政府が輸出を規制しています。

今後は、日本ウナギの稚魚(シラスウナギ)を育てるしかないのです。
しかし、その日本ウナギの稚魚も大幅に減少しているため、稚魚の価格は高くなっています。

その為、必然的に値段は高くなるでしょう。
しかし、2015年はシラスウナギの採捕量が回復したため、若干安く売り出されました。

その背景には、日本政府や団体による「ウナギの放流」や「捕獲制限」が関係しています。

 

ニホンウナギの保護は様々な団体が行っている

ウナギ資源の保護について 水産庁
出典:水産庁 ウナギをめぐる状況と対策についてより http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/meguru11.pdf

以前から、シラスウナギの減少が危惧されていました。

日本水産省や関係団体は、指をくわえて見ているだけでなく様々な取り組みを行っています。

ウナギ採捕を自粛制限

ウナギの減少を抑える目的として、多くの自治体が「漁獲を禁止」したり、「ウナギの放流」を行っているのはご存知でしょうか?

下記の地域では河川や海でウナギを取らない時期として漁を禁じています。

  • 青森県:10月~5月
  • 高知県:10月~3月
  • 宮崎県:10月~12月
  • 熊本県:10月~3月
  • 鹿児島県:10月~12月

また、東京都・愛知県・福岡県・静岡県では、うなぎの放流や下りウナギの漁獲を禁止し、ウナギの絶滅対策の取り組みを行っています。

 

将来は「うなぎの完全養殖」も

お刺身やお寿司の「トロ」で有名「クロマグロ」
こちらも鰻と同じ絶滅保護種に指定される寸前です。

日本人に馴染みのある魚であり、マグロも完全養殖は出来ないとされていました。(養殖槽にぶつかり、死亡してしまうため)
しかし、近畿大学が研究し、クロマグロの完全養殖が実現しています。(近大マグロ)

さらに、2015年には一般向けに大手全国スーパー(AEON)にて、近大マグロの本格販売が実現しています。

 

こういった取り組みは、ニホンウナギでも行われているのです。

少し時間が必要ですが、実現すればうなぎの価格は下がるかもしれません。

※この記事は、水産庁ホームページを参照して作成しています。

  • 水産庁/ウナギに関する情報
    http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/unagi.html
  • ウナギをめぐる状況と対策について 平成27年11月水産庁発行
    http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/meguru11.pdf