2017年は運送業者の人手不足問題が相次ぎ、「ヤマト運輸」「佐川急便」が料金の値上げを行いました。
それに加えて「ゆうパック」が2018年3月に値上げします。
関連記事:【値上げラッシュ2017】宅配大手ヤマトと佐川、ゆうパックが次々値上げ いくら上がる?
また、引っ越し業者も人手不足の例外ではありません。
トラックのドライバーが減り、人件費が高騰しているのです。
また、業者間の価格競争が激しく、途中で引っ越し業者を乗り換えるという事例も多くなっているようです。
当日・前日に解約しても、トラックや倉庫の手配、作業員などはすでに決まっているため、業者的には大赤字となることもあるようです。
その関係もあり国土交通省運輸局は、引っ越し業者の解約手数料の上限を値上げできるように改訂しました。
2018年6月からは、引っ越し業者の解約金の上限が「見積もり料金の最大50%まで取れる」ようになり、2日前から解約手数料を取ることが可能になります。
【2018年6月スタート】引っ越し業者「解約」料金
- 当日キャンセル:料金の最大50%まで
- 1日前キャンセル:料金の最大30%まで
- 2日前キャンセル:料金の最大20%まで
引っ越し業者の解約金は、運輸局(国土交通省)が定めている「標準引越運送約款」によって上限が決まっています。
えっ!?引っ越しの解約金って、業者が勝手に決めてたんじゃないの?
そうでもなかったみたいですね。
もともと引っ越し業者は、国土交通省(運輸局)への届け出制になっています。(緑ナンバー)
その審査には、「適切な料金になっているか?」もチェックされているんです。
もし、届け出をしていない業者だった場合、無認可ですので違法業者の可能性もあるようです。
法外な料金や、手付金、前払い金なども要求されるようです。
※引っ越し業者は、基本的に後払い制になっています。
引越運送契約をするとき、内金は必要ですか?
見積りが終了し、いざ契約しようとする時、「内金」「手付金」は一切必要ありません。
引用:引越情報BOX|近畿運輸局より
このような基準が定められたのが、運輸局の「標準引越運送約款」です。
引っ越し業者の「引越運送約款」も、「標準引越運送約款」を基準として作られています。
「標準引越運送約款」とは大きくかけ離れていれば、怪しい業者の可能性もあります。
後でトラブルにならないためにも、しっかりした知識が必要です。
「引っ越し料金の安さ」だけじゃ選んではダメなんだね・・・。
「標準引越運送約款」とは?
「引越運送約款(ひっこしうんそうやっかん)」とは、引っ越し業者が示している契約書のようなものです。
国土交通省(運輸局)が作成した「標準引越運送約款」を基準に作成している会社が多いようです。
基本的には、同じような様式で書かれていますが、業者によって内容が異なることもあるようです。
事前に「標準的な契約内容」を知っておくことで、悪質業者との契約を未然に防ぐこともできます。
標準引越運送約款ってどこで確認できるの?
基本的には、契約書や見積書にか書かれていますが、
公式ホームページがある業者は、インターネット上で確認できることが多いですよ。
運送業者には「運送約款(うんそうやっかん)」がある
人や荷物を運ぶには、国(国土交通省)の定めた規定をクリアする必要があります。
その中に、「運送約款を作る」も含まれています。
運送約款は、引っ越し業者に限らず、宅配業者やバス会社もそれぞれで作るようになっています。
そういえば、以前「観光バス」でも問題になったね。
もし、運送約款がなければ無届の業者である可能性が高くなります。
また、このような無届業者は、保険にも入っていない可能性があり、万が一事故が起こった時に問題が発生します。
事故ったらシャレにならないじゃない!
契約する前に、「運送約款」の存在を確認したいですね。
「標準引越運送約款」の知っておくべき内容
「標準引越運送約款」には、大切なことが7つ書かれています。
- 見積り
- 運送の引受け
- 荷物の受取
- 荷物の引渡し
- 事故
- 運賃等
- 責任
約款に目を通しておくことで、契約上のトラブルを未然に防止することができます。
「見積り」について
この項目には、見積書を作成するときに、記載する内容が書かれています。
特に、確認したいのが「下記の項目がしっかり書かれているか?」です。
確認したい見積書の項目 | チェックしたい内容 |
---|---|
荷物の受取日時及び引渡日 | 「荷物を取りに来る日」「受け取る日」があってますか? |
発送地及び到達地の地名、地番 | 「現在の住所(荷物の荷受け)」と「引っ越し先住所(お届け先)」
「引っ越し先住所」は間違いありませんか? |
運賃等の合計額、内訳及び支払方法 | 支払い金額
料金詳細(オプションなど) 実際の料金と違うトラブルが増えています。 |
解約手数料の額 |
これらが明記されてますか? |
当店の名称、事業許可番号 | 「正規の引っ越し業者」ですか? |
見積り担当者の氏名 | 「見積もり」と「実際の請求料金」が違ったら、担当者を出してもらいましょう。 |
荷送人及び荷受人並びに当店が行う作業内容 | 見積もり時にお願いした作業と、実際の作業内容が違うトラブルがあります。 |
特に多いトラブルとして、「見積もり料金と支払い料金」「作業内容」が違うという事があるようです。
作業内容の確認
作業内容とは、何を運んでくれるかです。
「家電や家具はすべて運んでくれるのか?」「植物はどうするのか?」など、当日何を運んでくれるのかを確認しましょう。
申告内容と違えば、料金が上乗せされることもあります。
2日前までなら変更可能
原則的に2日前までなら、変更可能とあります。
もし、荷物が増えたのであれば、早めに連絡することで対処してくれるようです。
引っ越しの見積料(内金、手付金)は、原則「なし」
見積もりの注意点としては、「見積もり料を取らない」という点です。
もし「見積もり料が請求された」という事であれば、断ってもいいかと思います。
下見料は、承諾すれば発生する
ただし、「下見の手数料は請求できる」とあります。
正確な運送料を知るためにも、日本トラック下見を推奨しています。
下見をする際の手数料は「事前に依頼主に許可を取った場合のみ請求できる」と書いてあります。
見積料は請求しません。ただし、発送地又は到達地において下見を行った場合に限り、下見に要した費用を請求することがあります。この場合には、見積りを行う前にその金額を申込者に通知し、了解を得ることとします。
勝手に料金が発生した場合は、支払う必要がなさそうです。
「引受け拒絶」(運べない物)
引っ越し業者でも運べない物、運べない時があります。
このような場合は、作業の引き受けを拒絶すること(運ばない)が可能になるようです。
「特殊な荷物」があれば、契約する前に引っ越し業者に運べるかを確認しましょう。
- 貴重品:現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャシュカード、印鑑など
- 火薬類その他の危険品、不潔な物品など
- 動植物、ピアノ、美術品、骨董品など
- その種類及び性質の申告をしなかった物
当日、運べない荷物と分かった場合は、その荷物は運んでくれない可能性もあります。
「ブランドバック」や「位牌」なども、拒否できる荷物に該当するようです。
また、引っ越し業者の関係でも、拒絶することができる場合もあります。
- 運送の申込みがこの約款によらないものであるとき。
- 運送に適する設備がない
- 運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
- 運送が法令の規定又は公の秩序、もしくは善良の風俗に反するもの
- 天災その他やむを得ない事由があるとき。
「荷物の受取」(受け渡し)
引っ越しの荷物を受け取りに来る前までに、「運送距離運送に適するような荷造りをする」必要があります。
荷づくりに不備があると指摘された場合、依頼主が荷造りを行う必要があります。
また、荷造り作業ができない場合は、「手数料を払うことで業者にお願いできる」場合もあるようです。
※荷造りオプションなどがある業者もあります。
当店は、荷物の荷造りが運送に適さないときは、荷送人に対し必要な荷造りを要求し、又は荷送人の負担により必要な荷造りを行います。
壊れやすい物は「申告」する
当店は、荷物を受け取る時に、貴重品、壊れやすいもの、変質若しくは腐敗しやすいもの等運送上特段の注意を要するものの有無並びにその種類及び性質を申告することを荷送人に求めます。
壊れやすいものや傷がついては困る物については、運び出す前に従業員に確認を取りましょう。
壊れ・傷は原則「修理」、弁償は「時価」
また、荷物に傷がついてしまっても、修理が原則です。
修理できない場合は、弁償になりますが「金額は時価による査定」になります。
購入時の金額や新品交換には、応じてくれない可能性がありますのでご注意ください。
「荷物の引渡し」(受け取り)
引っ越し先で荷物を受け取る日に不在になる場合は、代理人を立てることで受け取ることが可能のようです。
事前に分かっている場合は、前もって代理人の連絡先を申請する必要があります。
また、どうしても荷物が受け取れなくなった場合、引っ越し業者と相談することで倉庫などを有料で借りることになるようです。
荷受人等が荷物の受取を怠り若しくは拒んだとき、若しくはその他の理由によりこれを受け取ることができないときは、遅滞なく荷送人に対し、相当の期間を定め荷物の処分につき指図を求めます。
指図の請求及び、その指図に従って行った処分に要した費用は荷送人の負担とします。
また、一定期間「連絡がつかない」「荷物を渡せない」場合は、競売で処分するともあります。
実際にはなさそうな話ですが、万が一は処分になると覚えておくといいかと思います。
また、競売にかけても、費用がそれ以上の金額になる場合は、依頼主に請求するとあります。
競売したときは、その代価の全部又は一部を運賃等並びに指図の請求及び競売に要した費用に充当し、不足があるときは、荷送人にその支払を請求し、余剰があるときは、これを荷送人に交付し、又は供託します。
「事故」(配送途中のトラブル)
人が荷物を運送する関係上、何らかの事故やトラブルが起こる場合があります。
もし、配送の遅れや荷物の紛失・傷が発見された場合、「すぐ依頼主に連絡し指示を求める」とあります。
荷物の相当部分の滅失又は全部若しくは相当部分のき損を発見したとき、又は荷物の引渡しが見積書に記載した引渡日より遅延すると判断したときは、遅滞なく荷送人に対し、相当の期間を定め荷物の処分につき指図を求めます。
また、連絡する時間がないほど緊急だった場合や連絡が取れない場合は、ドライバーの判断によって処置を行うようです。
その場合は、事後報告になるようです。
指図を待ついとまがないとき、又は当店の定めた期間内に指図がないときは、荷送人の利益のために、当店の裁量によって運送の中止又は運送経路若しくは運送方法の変更その他の適切な処分をします。
途中での「き損(傷や破損)」は「事後報告」
き損とは、荷物に傷が入ったり、壊れた場合のことです。
もし、荷物の一部に傷がついてしまった場合は、運んだ後に報告するようです。
荷物の一部の滅失又はき損を発見したときは、荷送人の指図を求めずに運送を続行した上で、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。
また、荷物を受け取った後に傷を発見した場合は、3か月以内であれば受け付けてくれるようです。
後日、荷物の滅失、き損が判明した場合、事業者に責任を求めることができますか?
引越が終了したら早めに荷物等の確認をしましょう。もし荷物等が滅失又はき損した場合は、荷物を受け取った日から3ヶ月以内に必ず連絡してください。
連絡をしないと事業者の責任は、消滅します。
「運賃」(料金詳細)
引っ越し料金(運賃)は、企保天気に「見積もり金額とほぼ同額」になります。
見積書に記載した内容に準拠して記載します。ただし、見積りを行った後に当該内容に変更が生じた場合は、当該変更に応じて所要の修正を行います。
ただし、「追加でオプションを頼む」「特殊な運送方法が必要になった」「荷物を処分した」など、作業内容が見積もりより増えた場合、料金が上乗せされることがあります。
処分をしたときは、その処分に要する運賃、料金その他の費用を収受し、並びに当店が既に行った運送及びこれに附帯するサービスに要した運賃等を収受します。
その際には、請求金額が随時修正されていくようです。
必ず見積もりと同額にならないことがあるようです。
また、途中で何らかの事故やトラブルがあっても、目的地(引っ越し先)に荷物を届けれた場合は、料金は通常通り請求できるとあります。
当店は、荷物の一部の滅失若しくはき損又は遅延が生じた場合において申込みに係る運送を続行した場合は、運賃等の全額を収受します。
解約手数料について
依頼主の都合によって、解約や延期になった場合は、手数料を求めることができるとあります。
解約手数料又は延期手数料を請求する場合は、その解約又は受取日の延期の原因が荷送人の責任によるものであって、解約又は受取日の延期の指図が見積書に記載した受取日の前日又は当日に行われたときに限ります。
2017年12月現在は「受取日の前日または当日」とありますが、
2018年6月以降は「受取日の前々日、前日または当日」に変更される可能性があります。
業者の判断によりますが、おおむね「前々日から解約金が発生する」と思われます。
「責任」(弁償について)
引っ越し作業・運搬の途中で荷物に傷がついたり、壊れた場合は、弁償になります。
ただし、従業員に対して、傷がつきやすいなどの注意点を申告をしなかったり、荷物の中身が違っていれば、「修理・弁償の対象にならない」とあります。
また、それ以外にも天災(地震や津波などの災害)、自然消滅(腐敗やさび)なども対象外になるようです。
修理・弁償の対象外になるケース
- 荷物の欠陥、自然の消耗
- 荷物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびその他これに類似する事由ストライキ若
- しくはサボタージュ、社会的騒擾その他の事変又は強盗
- 不可抗力による火災
- 予見できない異常な交通障害
- 地震、津波、洪水、暴風雨、地すべり、山崩れその他の天災
- 法令又は公権力の発動による運送の差止め、開封、没収、差押え又は第三者への引渡し
- 荷送人又は荷受人等の故意又は過失
「損害賠償の額」
もし、荷物が指定した日に届かなかった場合、どうなるのでしょうか?
一般的には、「引越運送約款」に定めている通りに判断されます。
見積書に記載した受取日時に荷物の受取をしなかったとき 受取遅延により直接生じた財産上の損害を運賃等の合計額の範囲内で賠償します。
このように書かれている場合、荷物が送れることで「財産上の損害を受けてしまった場合のみ」、運賃の金額で賠償になるようです。
つまり、運賃以上の賠償額を請求できないという事です。
また、財産上の損害がなければ、1円も請求できないという事です。
また、賠償手続きには期限があり、荷物の引き渡し日から3か月以内に申告しないと、いけないようです。
荷物の一部の滅失又はき損についての当店の責任は、荷物を引き渡した日から三月以内に通知を発しない限り消滅します。
また、請求できる期間は期限があります。1年以内に話し合いが成立しない場合は、時効になって無効になるようです。
荷物の滅失、き損又は遅延についての当店の責任は、荷受人等が荷物を受け取った日から一年を経過したときは、時効によって消滅します。
まとめ:「引越運送約款」は見積もり時に必ずチェック
このように「標準引越運送約款」には、料金・サービス内容が細かく書かれています。
引っ越し契約書の字は小さいですが、大切なことがびっしり書かれています。
一引っ越し料金は高額です。
思わぬところで、トラブルになりやすいので、契約する前に確認しましょう。
また、途中でおかしな点(規約の改変など)に気が付いたら、引っ越し業者に尋ねてください。
あいまいな答えが返ってきたら、別業者に依頼することも大切です。