高齢者が暮らしやすい世の中にするには?

日本の高齢者数は3200万人以上もいます。
しかし、今の日本には介護職員が少なく、150万人程度しかいません。

その対策として日本政府は、介護職員の離職者をゼロにする政策を打ち出していますが、
介護者による虐待が増えているのも事実です。

毎年約1万6000件の介護虐待が発覚しています。(行政側が認知した数)
”身近な人の通報”が主な発見経路です。

出典:平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要より http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/0000073579.pdf
出典:厚生労働省 平成25年度 高齢者虐待対応状況調査結果概要より
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/0000073579.pdf

この問題を解決するために作られた法律が「高齢者虐待防止法」です。

この法律は、5つの虐待を阻止するための法律です。
「虐待を目撃した」「疑いがあると判断した」人は、”市区町村への通報”を日本国民に義務化しているのです。

これは介護にあたる職業に人だけでなく、一般の人へも義務化をしています。

例えば、「お隣さんの高齢者を怒鳴る声(叱る声)が聞こえる」という場合や
「顔や腕に”打撲傷”のようなものをいくつも発見した」という場合が想定されます。

また、ご近所のうわさで「財産を勝手に処分しているのでは?」ということも事実であれば、報告するべきかもしれません。

同じような法律に「児童虐待の防止等に関する法律」もあります。
こちらは、児童への虐待を見かけたら、市区町村への報告を義務していますので同じような法律といえます。

しかし、内容はほぼ同じといっても過言ではありません。
ここではどのような行為を見かけたら通報した方がいいのかをご紹介します。

 

どんなことが”虐待”になってしまうのか?

「まさか今までやっていたことが虐待だったなんて・・・」

加害者本人が気が付かないこともあります。
また、本人が認めなければ外見からは判断しにくい・わかりにくいケースもあります。

そのため基準を設けています。

  1. 身体的虐待(暴力など)
  2. 介護放棄(世話を行わない行為)
  3. 心理的虐待(無視や大声で怒る行為も該当する)
  4. 経済的虐待(財産の処分や利用など)

これ以外にもありますが、表面からわかるご近所さんで気が付くのはこの4つの行為かと思われます。

これら報告があると、自治体関係者が調査や保護を実施します。
(逆に言うと、報告がないと行政はいつまでも動きません。)

施設であれば立ち入り調査を行い、
個人宅であれば加害者との隔離(面会謝絶)を実施します。

もう少し具体的にみていきましょう。

 

身体的虐待とは?

高齢者の身体に外傷が生じる可能性のある暴力

この項目が一番多く報告があり、虐待の全体で63.8%です。
しかし、この数字は外見から判断しやすい部分もあり、介護者や病院関係者が多いためのようです。

一番発見しやすく、報告する環境が整えられているためといえるでしょう。

 

介護放棄とは?

下記行為が該当します。

  • 養護を著しく怠る行為。
  • 世話の放棄・放任、減食など

しかし、このような行為は判断しにくいのが現状です。
報告率は全体の8.5%しかありません。

なぜなら、家の中でしか行えない行為でもあるからです。
定期的な介護訪問などでしか発見できません。

逆に言うと、まだ報告されていない事象もある可能性もあるでしょう。

 

心理的虐待とは?

こちらは2番目に多い通報件数です。(全体の43.1%が該当)

  • 高齢者に対する著しい暴言
  • 拒絶的な対応(無視)
  • その他心理的外傷を与える言動

「言葉の暴力」の報告が急増しています。

些細な言葉でも、本人がトラウマを抱えるなら虐待ととられることがあります。
また、ちょっと注意するつもりでも、大声で怒鳴る行為をすると、本人や周辺にはそう取られないケースもあります。

特に高齢者は、逃げ出すこともできませんので、周りが動かなければいけません。

 

経済的虐待とは?

こちらは3番目に報告が多い行為です。(全体の16.8%)

  • 高齢者の財産を不当に処分する行為
  • 高齢者から不当に財産上の利益を得る行為

たとえ親族であっても勝手に財産を使用・処分はできません。

特に多くなっているのが、勝手に年金に手を付ける被害です。
親族だけでなく、介護者が勝手に年金や貯金を下す行為が報告されているのです。

 

介護職員による虐待は全国で300件?氷山の一角にすぎない

”介護施設に預けているから安心”ということでは決してありません。
中には虐待が常習化した施設があるのです。

そのような施設は行政が処分(営業停止)しますが、こういう例は稀でしかありません。

なぜなら、会社ぐるみということはほとんどなく、一個人の介護者が隠れて行っているからです。
このような場合、非常に気が付きにくいのではないでしょうか?

また、訪問介護になると担当者が変わらない限り、気が付かない可能性もあります。

こういったことは未然に防ぐことが難しいため、
介護を提供する会社(つまり介護職員の雇い主)がさらなる管理体制を強化する必要があるのかもしれません。