国会議事堂2016年1月22日、安倍晋三(あべしんぞう)内閣総理大臣は、国会の冒頭で施政方針演説を行いました。

施政方針演説とは、毎年1月通常国会の冒頭で行う「将来どこに向かいたいのか」を発表するものです。

今後国会で、「どのような内容の議論をするのか」を発表したということになります。

2016年以降、日本ではどのような事が始まっていくのでしょうか?
確認してみましょう。

 

1億総活躍社会への挑戦

「1億総活躍」とは、日本国民一人一人に対する政策です。

安倍首相は、「人それぞれに見合った多様な働き方を可能にしたい」と発表しています。
そのために、下記6つの政策を掲げています。

  1. フレックスタイム制度の拡充(変形労働時間)
    出退勤の時間を自分で決める事ができる制度
  2. 専門性の高い仕事では時間(時給日給)ではなく「成果」で評価(歩合?)
    残業代が出ないというデメリットもある
  3. 時間外労働の割増賃金の引き上げ
    定時終業による過労抑制の効果も
  4. 長時間労働の抑制
    働きすぎによる過労問題の改善
  5. 年次有給休暇を確実に取得できる仕組み
    有労働基準法の罰則強化
  6. 女性が活躍できる社会づくりの加速

どれもが、労働者に直接関係することばかりです。
しかし、よく見ると働く時間が減る可能性がありそうな政策が含まれています。

「長時間労働の抑制」や「時間外勤務の賃金アップ」は、雇う側からするとデメリットが多くなります。

同時に賃金アップを要求していますが、「中小企業には難しい」と思われます

また、専門職の方は、出来高制の賃金になり、給料が下がるリスクもあります。
こういった問題をどうするのかが、今後問われることになります。

 

女性が活躍する社会の実現のために行う政策

日本の人口は、年々減少しています。
人口減と共に働き手も少なくなってしまっているのが現状です。

1億総活躍には、「現在働いていない女性」を”働き手に変える”ための政策が盛り込まれています。

  • マタハラ(マタニティーハラスメント)の防止措置を企業に義務付け
  • 男性の育児休業を促す
  • 新しい助成金の創設

女性の多くが出産・育児を機に職場を離れています。
特に、マタハラを受けてしまうと、以前の職場に復職は事実上不可能です。

マタハラを抑制したり、男性の育児休暇を増やすことで、女性に働く機会を増やしたいようです。
また、少子化対策としても効果を期待しています。

 

障害者が安心して働ける社会に

障害者総合支援法のさらなる改正

障害者総合支援法とは?
全ての国民が、障害の有無にかかわらず、個人として尊重されることを理念とする法律。
  • 訪問介護や支援の範囲拡大
  • 共同生活介護への援助
  • 労働支援

障害者支援法の改正は、2013年、2014年と改正をしました。
2016年度も改正を行うようです。

2013年の改正 障害者の定義に難病等を追加
2014年の改正
  • 訪問介護の対象者の拡大
  • グループホームへ一元化

また、労働者としての支援も考えているようです。

 

非正規雇用者への政策

2016年は「被用者保険の拡大」が決定しています。
年収103万円以上のアルバイトやパートの雇用保険への強制加入です。

その他にも、いくつか政策が予定されています。

  • 均衡待遇の確保
    同一労働同一賃金(ニッポン1億総活躍プラン)
  • 短時間労働者への被用者保険の拡大(10月開始)
    関連:103万円の壁 パートアルバイトの雇用保険加入義務
  • 正社員化・処遇改善をしている企業への助成金拡充(キャリアアップ制度)
    派遣労働者母子家庭世帯の親を雇用すると助成金が出る
  • 契約社員の育児休業や介護休業を可能にする(1年以上の契約者)

2016年注目したいのは、派遣労働者や契約社員を正社員にすると助成金がもらえるキャリアアップ制度の拡充です。

キャリアアップ制度とは?(補足)
厚生労働省HPによると2015年度現在は、「派遣労働者や直接雇用する場合30万円」、「母子家庭世帯の親を雇用すると10万円」を実施した企業に支給しています。

2016年はキャリアアップ制度の金額を増やし、雇用する会社を支援すると予想できます。

しかし、キャリアアップ制度には欠点もあります。
助成金が出る人数や期間が限定された支援だからです。

すべての人が正規雇用になる可能性があるわけではありません。
今後は、この点をどのように”拡充”するのかに注目する必要があります。

 

介護職の強化

介護職の”離職者”は年間10万人を越えています。
このまま行くと介護士の人手不足になり、高齢者が「介護を受けられない」「介護施設に入居できない」可能性があるとのことです。

介護職者の離職数を「ゼロ」に近づけ、介護者をる政策を掲げています。

  • 在宅介護の負担軽減
    訪問介護士の確保・育成
  • 高齢者向け施設の建築支援(2020年までに50万人分整備)
    介護施設予定地には国有地を安く提供
  • 介護福祉士を目指す学生への奨学金制度を拡充(返還免除も)
    働き手の育成
  • 介護職への復職者には再就職準備金を支給
    離職した人の支援
  • 25万人以上の介護人材を確保
    ハローワークなどの支援を強化
  • 介護休業の分割取得を可能にする
    介護休業の期間である「93日間」を各家庭1回限りから、分けて取得できるようになる(2017年改正)
  • 介護休業中の給付金を67%に引き上げ(現状40%)
    給付手続きの詳しい方法はハローワークHP雇用継続給付をご参照ください。
  • 給付金の条件を所定外労働の免除短時間勤務の創設義務
    「残業をさせてはいけない」「6時間以内の短時間労働を設置すること」としています。

高齢者の労働支援

生涯現役時代に突入

若い人口が減っている中、定年を迎えても働く人が増えています。
若い世代だけでなく、高齢者にも働ける環境を用意する必要があります。

そのためにも、雇用保険の加入義務が必要になるとしています。
保険料の支払いが必要になるため、一見すると不利なように見えますが、仕事の安定にもつながるため決して損ではないとのことです。

  • 65歳以上70歳未満の労働者も雇用保険の加入義務
    メリットは、失業給付金がもらえるようになる
  • 退職者向け再就職支援制度
    65歳までの労働者を確保するのが目的
  • 定年延長を行う企業への支援
    将来、企業の定年制を廃止する義務が発生する可能性も?

少子化対策

50年後も人口1億人を維持するために、少子化対策として「希望出産率1.8」を目標にすると明言しています。

その対策としては、若い世代への支援を主に掲げています。
出産育児一時金や出産手当金の見直しも考えているようです。

  • 所得の低い若年層への経済的支援
  • 不妊治療への支援拡張
  • 産前産後期間の年金保険料を免除
  • 子育て世代包括支援センターの全国展開
子育て世代包括支援センターとは?

ワンストップ相談窓口により、子育て家庭の相談を受けたり情報提供を行う機関のこと。(保健所や市区町村、民間を想定)

妊娠期や出産直後だけでなく、子育て中も相談できるようになります。

幼児保育の充実

「待機児童ゼロ」を目標とした政策を実施。
それには保育所を増やして、雇用を増やすことを挙げています。

また、保育士を増やすための資格取得を支援する方針です。

  • 50万人分の保育所整備(2017年度末までに)
  • 返還免除型の奨学金拡充
    保育士修学資金貸付制度
  • 9万人の保育士を確保(再就職準備金などで)

子供への教育支援

日本の未来は「子供たち」をテーマに、子供たちの教育に対する支援を行います。

特に、ひとり親などで経済的に不利であっても、専門学校や大学への進学が出来るような支援制度を考えているようです。

  • ひとり親家庭への支援拡充
  • 児童扶養手当の加算を倍増(所得の低い世帯)
    支給額:第2子は付き1万円、第3子は6千円に
  • 幼児教育無償化
    →保育園や幼稚園の保育量を第2子は半額、第3子以降は無償になる
  • 高校生への奨学給付金拡充(2017年度の進学予定者から)
    卒業後の所得により返還額が変化し楽になる
  • 希望すれば誰もが高校や大学に進学できる環境を整える
  • フリースクール(不登校)の支援・教育再生

また、不登校の子供たちの支援も本格的に行う方針です。
(今まで行っていませんでした)

 

温暖化・環境対策

最後に環境問題にも力を入れるようです。
2015年に行われた第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21パリ協定)を主動とした二酸化炭素排出量の削減に力を入れます。

2016年4月から始まる電力小売自由化でも、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギー強化の一環です。

さらに、水素カーや電気自動車の普及も視野に入れています。

以上が、2016年以降に始まる日本政府の動きです。
すでに決まっている政策もあれば、これから話し合われるものまで数多くあります。

詳細は、これから少しずつご紹介していく予定です。